からだの捉え方

西洋医学が局部治療を主とするのに対して、中医学はからだ全体のバランスを整えることを軸とします。

人間のからだは「肝・心・脾・肺・腎」の五臓と「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」の六腑、「目・耳・鼻・口・舌」の五官、「両目・両耳・鼻(二つ孔)・口・尿道・肛門」の九竅(九つの穴)、四肢、百骸(全身の骨・関節)、筋肉、経絡、気・血・津液などのそれぞれ機能が異なる組織と器官で構成されています。
これらは五臓を中心として統一されて、互いに助け合い、バランス良く、全体としての生理機能を保っているのです。

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■肝■

  1. 胆・目・筋・爪・涙・怒りと関連しています。 肝に問題があれば、精神症状が出たり、目が黄色くなり、爪は青くなったりします。
  2. 疏泄を司ります。 精神の安定や安眠、気の巡りや血流、むくみ、消化吸収の促進、月経などに関わります。
  3. 蔵血を司ります。 血液を貯蔵して、血量を調節します。

■心■

  1. 小腸・舌・脈・顔・汗・喜びと関連しています。 心に問題があれば、動悸や汗が出たり、不眠、夢をよく見るなどの眠りの症状が現れます。
  2. 血脈を司ります。 血流や脈の動きは心の働きです。
  3. 神志を司ります。 顔色・視線・言語・反応・姿勢・動きなどの生命活動、精神・意識・思惟活動は心の働きです。

■脾■

  1. 胃・口・肉・唇・涎・思い考えることと関連しています。 脾に問題があれば、食欲不振や腹部の膨満感、むくみや疲れ、下痢などが現れます。
  2. 運化を司ります。 飲食物を消化吸収して「水穀精微」という営養物質に変えます。
    また、水液を吸収、全身に送ります。 さらに、内臓の位置が下がらないようにキープしています。
  3. 統血を司ります。 血が血管外に漏れ出ないようにしています。

■肺■

  1. 大腸・鼻・皮膚・皮毛・鼻水・悲しみと関連しています。 咳・喘息・鼻づまり・皮膚乾燥・便秘などは肺と関係しています。
  2. 呼吸と気を司ります。 呼吸を正常に保ち、血流を調節し、生命活動をスタート&キープするのは肺の働きです。
  3. 宣発と粛降を司ります。 肺気の昇降出入運動のことです。
    宣発と粛降によって尿を生成、排泄する働きがあり、これを通条水道といいます。
  4. 百脈が集合します。 全身の血脈が全部肺に集まります。

■腎■

  1. 膀胱・耳・骨・髪・唾・恐れと関連しています。 腎に問題があれば、老化や性機能の低下、尿の異常・足腰のだるさ・難聴・脱毛などが現れます。
  2. 蔵精を司ります。 (腎)精を補給して貯蔵します。
  3. 成長・発育・生殖を促進します。 生命の誕生 ⇒ 生長 ⇒ 発育 ⇒ 成熟 ⇒ 老衰 ⇒ 死亡の過程は全て、腎気・腎精と関わります。
  4. 髄を化生、骨を滋養、脳につながります。 歯に関連します。
    脳髄がたっぷりあれば、視力がよく、聴力が鋭く、嗅覚は鋭敏、など、感覚の反応が素早く、運動も機敏。 からだが元気な状態を保てます。
    歯も髄によって養われていて、「歯は骨の余り」と言われます。
  5. 水を司ります。 水分の再吸収&尿の生成、膀胱の開閉によって尿を排泄させることで、体内の津液の代謝バランスを保ちます。
  6. 納気を司ります。 呼吸の吸気を収めています。 これによって、腹式呼吸になって、効率的な深い呼吸になります。

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このように、からだの各臓腑・組織は、生理機能において互いに助け合っていて、病気が起これば、互いに病理的な影響を与えあうのです。
全体のバランスを整える理由は、ここにあります

また、人間は自然界の中の1つ、という考えもあります。
季節や気候の変化、社会環境の影響なども、私たちのからだには大きく関わっているのです。