うつのための薬膳

うつに対しては、薬よりも日常生活に気をつけて精神状態を調えるように努力したり、食生活の調節をすることの方が効果的。 薬膳処方を作るときは、肝気の疏泄をはかることが最も重要です

 

14da3ec5f5242656a3d402cbfc7d858c_s

______。o*★*o。_____

鬱証全般

【共通の症状】
気分が落ち込む・反応が鈍い・言葉や動作が減る・疲れを感じる・怒りや不満がたまる・やる気が出ない・絶望感や孤独感が強い・思考能力の低下・緊張や不安が高まる・神経質になる・躁とうつが交互に現れる・頭痛・ため息・脇肋が脹れて痛む・睡眠障害・食欲がない・自殺傾向がある
舌色が白い・脈が弦

【分析】
ストレスなど七情失調が原因で、情緒を調節する肝の働きと、精神・意識を主る心の働きが不調となり躁鬱状態に陥ります。 主に気機の巡りと精神状態に影響を与えます。 肝鬱や、肝気の昇発が盛んになりすぎることにより痛みの症状が出ます。 心神不寧により思考能力の低下・睡眠障害などの症状が現れます。

【立法】
疏肝解鬱・養心安神

【食材】
疏肝理気 : そば・大根・かぶ・香菜・大葉・らっきょう・なた豆・えんどう豆・みかん・オレンジ・ジャスミン
行気化痰 : 里いも・からし菜・大根・かぶ・らっきょう・へちま・たけのこ・みかん・オレンジ・文旦
益気養血 : うるち米・黒米・山いも・じゃがいも・にんじん・ほうれん草・小松菜・干ししいたけ・ぶどう・ライチ・ピーナッツ・栗・鶏肉・牛肉・豚ハツ・いか
滋陰安神 : あわ・白菜・セロリ・せり・トマト・きゅうり・牛乳・鴨肉・豚肉・豚足・牡蠣・あわび・ほたて

______。o*★*o。_____

肝気鬱結タイプ

【症状】
共通の症状 + めまい・のぼせ・咳嗽・喘息・下腹部の脹痛・しゃっくり・げっぷ・生理不順・生理痛・生理前(生理中)の乳房の脹痛
舌苔が白くてじゅくじゅくしている・脈が弦

【分析】
ストレスや精神的な疲れにより肝気の巡りが停滞してしまう症状、または肝気の昇発しすぎによるめまい・のぼせなどがみられます。

【立法】
疏肝解鬱・行気止痛・順気降逆

【食材】
そば・えんどう豆・らっきょう・なた豆・大根・香菜・大葉・みかん・オレンジ・ジャスミン

______。o*★*o。_____

気鬱化火タイプ

【症状】
共通の症状 + めまい・耳鳴り・目が赤い・口が苦い・のどが渇く・不眠または悪夢・胸脇灼痛・吐血・鼻出血・尿が黄色い・便秘
舌が紅色・舌苔が黄色・脈が弦で速い

【分析】
肝気鬱結が長引くと、肝火に変化します。

【立法】
疏肝理気・清熱瀉火

【食材】
あわ・きゅうり・ゴーヤ・なす・トマト・白菜・セロリ・せり・すいか・さとうきび・梨・緑豆・茶・豆腐

______。o*★*o。_____

気滞痰鬱タイプ

【症状】
共通の症状 + のどの異物感・胸悶
舌の苔が白くてじゅくじゅくしている・脈が弦で滑る

【分析】
肝気鬱結により津液の代謝が悪くなり、痰湿が生まれ、気機の巡りをさらに悪化させます。 「梅核気」というのどの異物感症状があります。

【立法】
理気解鬱化痰

【食材】
春菊・大根・ごぼう・里いも・らっきょう・へちま・たけのこ・からし菜・みかん・オレンジ

______。o*★*o。_____

心神不安タイプ

【症状】
共通の症状 + 精神不安・心悸・泣いたり憂えたりする
舌苔が薄白・脈が弦で細い

【分析】
虚弱体質・慢性の病気・ストレスなどにより心気不足・心血虚の症状が起こり、神志を主る働きが低下します。

【立法】
養心安神

【食材】
小麦・ピーナッツ・にんじん・ほうれん草・小松菜・ぶどう・ライチ・豚ハツ・いか・牛乳・牡蠣・ほたて

______。o*★*o。_____

心脾両虚タイプ

【症状】
共通の症状 + 心悸・夢をよくみる・めまい・物忘れ・顔色が淡白または萎黄・四肢の疲れ・下痢・汗
舌色が淡く舌苔が白い・脈が細くて弱い

【分析】
脾気虚・心血虚により気血両虚の症状が起こります。

【立法】
健脾養心・益気補血

【食材】
うるち米・にんじん・長いも・じゃがいも・ぶどう・ライチ・ピーナッツ・栗・干ししいたけ・豚ハツ・鶏肉・牛肉・いか・たこ

______。o*★*o。_____

陰虚火旺タイプ

【症状】
共通の症状 + めまい・心悸・夢をよくみる・腰痛・足腰がだるい・生理不順
舌が紅色で津液が少ない・脈が細くて速い

【分析】
虚弱体質や慢性の病気により、うつ状態が長引くと、腎陰不足・心火旺盛の症状が起こります。

【立法】
滋陰盛熱・鎮心安神

【食材】
あわ・梨・きゅうり・トマト・白菜・セロリ・せり・緑茶・黒ごま・豆腐・卵・牛乳・鴨肉・豚足・すっぽん・いか・牡蠣・マテ貝・ムール貝・ほたて

 

follow us in feedly

うつのケア方法

うつのケア方法もシーズンによって異なります。 シーズンごとのケア方法を覚えておきましょう。

______。o*★*o。_____

058512602ee1f2bae9e8244989811650_s

 五行学説では春は木に属し、また臓腑では肝に相応します。 「怒り」は肝の感情の表現で、春は怒りやすい季節。
 春のケアは、心を広く持って愉快な気分を保ち、欲求や希望をのびのびと成長させること♬ この成長に役立つものを抑えたり奪ったりしてはいけません。 できるだけ怒ることは避けましょう。

______。o*★*o。_____

b837d8da4027c3f7c19e13a3b4764cfd_s

 五行学説では夏は火に属し、また臓腑では心に相応します。 「喜び」は心の感情の表現。
 夏のケアは、感情を安定させて度量を大きく持ち、快く元気で明るい外交的な性格を育てましょう。 焦ったり怒ったりしてはいけません。

______。o*★*o。_____

02429f65fdef924dd9c7fb5507e0690b_s

 五行学説では秋は金に属し、また臓腑では肺に相応します。 肺は潤いを好み、肺が潤うと肺気の上げ下ろしが順調になります。 悲しみや憂いという感情は肺と関係の深い表現。 秋は寂しくなりやすいのです。
 秋のケアとしては、悲しみや憂いといった、マイナスの情緒を克服して、楽観的な情緒を育てましょう。

______。o*★*o。_____

117d1c3b2466c8cfe4d4bba1624c67bf_s

 五行学説では冬は水に属し、また臓腑では腎に相応します。 恐れや驚きは腎の感情の表現。 寂しくなりやすく、うつにもなりやすいのです。
 自然界は冬になると万物の陽気を潜伏させます。 また寒いので陰気が旺盛になります。 冬のケアとしては、からだも陽気を収斂するため、陽気を補養して翌年の春の生発を有利にするように、精神の安静を求めましょう。 いつも明るい楽しい気持ちで過しましょう。

 

follow us in feedly

うつ

 中医学では強い精神的ストレスを受けて様々な症状が出てくることを「鬱証」といいます。

 

うつ
cbf9ebaa3a9aab6b45ea17b2b4831fbf_s

 

 長期間にわたる精神的な緊張・不安、不愉快な情緒などのストレスによって気機の巡りが滞ると、鬱証が生じます。
気機の動きは、七情*の影響によってさまざまな反応としてからだに現れます。 たとえば、「喜」は気の流れをのびのびと通じさせるので、精神的・肉体的にリラックスして楽しくなりますが、「怒」は精神的な興奮・衝動として、気機の乱れを引き起こし、身体に不快感を与えます。 このような気の動きによる身体変化は、一時的な変化なので、積極的に対応すればよくなりますが、長期間異常な状態が続くと、―特に現代社会に多いストレスなどが続くと―臓腑・血・津液に影響を与え、鬱証が生じることになります。

*七情 : 怒・喜・驚・思・憂・悲・恐 の7つの情緒

______。o*★*o。_____

七情と五臓・気血

鬱証は情緒との関連が深く、また情緒や精神意識活動はそれぞれの五臓の働きにつながっています。

  1. 怒り
    肝を傷つけ肝気の巡りを悪くし、血流を悪くしてしまいます。 ⇒ 正気(自然環境に対する調節機能と疾病に対するバリア機能)不足に
    【症状】 顔色が紅い、目が紅い、胸脇脹痛、ため息、吐血、下痢、生理不順、生理痛、頭痛

     

  2. 喜び
    適度な喜びは気を巡らすことができますが、過度な喜びは心を傷めます。
    【症状】 不眠、動悸、発汗、息切れ、集中力低下、精神不安、無気力

     

  3. 思い悩む・憂い
    脾を傷つけ、正気不足を招きます。
    【症状】 食欲低下、胃もたれ、吐き気、胃痛、お腹の張り、不眠、健忘、下痢

     

  4. 悲しみ・憂い
    肺を傷め、肺の邪気の侵入を防ぐ衛気の巡りを鈍らせます。
    【症状】 無気力、声が低い、疲れやすい、元気がない

     

  5. 恐れ・驚き
    腎を傷め、元気がなくなったり、老化が進んだり…。
    【症状】 緊張、精神不安、安眠できない、動悸、頻尿感、尿漏れ、便漏れ、性機能低下

     

  6. 気機の乱れ
    気とともに全身に巡る血にも影響が出ます。 血の巡りが悪くなると、瘀血が生じます。

     

  7. 不摂生な生活、睡眠不足、過度な性生活
    ストレスの原因となり、気血の巡りがダウン↓↓ ⇒ 肺・肝・脾・心を傷めます

     

______。o*★*o。_____

鬱証の原因

1.ストレスなどの精神的な刺激

 鬱証の発病の原因で最も多いのは、情緒とつながる精神的なストレス。
中医学からみると、ストレス、特に怒・思・憂・悲の刺激によって、肝の疏泄を主る機能・心の神志を主る機能・脾の運化を主る機能が失調 ⇒ 臓腑・陰陽・気血の障害が引き起こされます。

  1. 憤懣鬱怒・肝気鬱結 : 鬱憤・怒り・せっかち・我慢しすぎる、などによって肝の疏泄機能が失調 ⇒ 気機が不調に ⇒ 気鬱症状
  2. 憂愁思慮・脾失健運 : 心配事や悩み、悲しみなどの精神的な緊張が続き、肝気鬱結が脾に及ぶ ⇒ 脾気が鬱結 ⇒ 脾の機能低下 ⇒ 水穀(飲食物)の消化や水湿の運化に悪影響 ⇒ 鬱症状
  3. 情志過極・心失所養 : 精神的に問題を抱えていたり、家庭内の問題や不幸などによって心神を損傷 ⇒ 「神」を貯蔵できない ⇒ 鬱症状

     

2.臓腑機能の失調

 臓腑機能の失調による鬱証の原因

  1. 遺伝的要素 : 抑うつには遺伝性はありません。 しかし、性格・心理状態に遺伝が関わっています。
  2. 疾病 : 脳動脈硬化・高血圧・心臓病・甲状腺機能低下・がん・薬物(避妊薬など)およびアルコール中毒
  3. 過労・精神的疲労
  4. 産後の腎虚によるホルモン分泌の失調、育児・家事の負担によるもの
  5. 老化 : 女性は45~55歳、男性は55~60歳の間に更年期に入り、成熟期から老年期へと移行します。
    性ホルモンのバランスの崩れ、免疫能力低下、精神神経系の障害などによって、生理・心理面の両方に影響が…‼
    女性であれば、女性美の喪失感、家庭内の問題(夫の定年、こどもの離反)などのため、いっそう抑うつが生じやすいのです。
  6. 定年による価値観や環境の変化・気分の落ち込み・不安・がっかりする・やる気を失う・反応が鈍くなるなど
  7. 季節性 : 色鮮やかな春や夏から、落ち葉の秋や寒い冬への変化も、寂しさのため情緒が落ち込みやすくなります。

follow us in feedly