女性のカラダ④―妊娠初期

妊娠の続きです。116844 受胎してから、妊婦の新陳代謝はより旺盛になり、体重は平均10~12kg増えます。 妊娠末期(最後の1か月)は、1週間に0.5kgを超えないように注意が必要です。

 妊娠初期(~3か月)は、吐き気・嘔吐・食事の好き嫌いが出てきます。 いわゆる「つわり」です。 母親の体質を受け継ぐひとがいたり、なかには、つわりの症状が全く出ないひともいます。 はっきりした原因は不明ですが、カラダのなかに新しい生命が誕生し、急激に状況が変化していくのにカラダ自身が対応しきれなくて、つわりなどの症状を引き起こすのでは、と考えられています。

 また、つわりで食事ができないと、赤ちゃんの栄養不足が心配になるかもしれませんが、妊娠初期の赤ちゃんはママが食事によって摂取する栄養からではなく、卵巣からの栄養で支えられているので、ママが十分に食べられなくても、赤ちゃんは発育します。
 そのほか、妊娠初期は子宮内での着床が不安定なので、流産の危険性が高くなります。

 中医学では、つわりのメカニズムは平素、脾胃の働きの虚弱で衝気(1)が上逆し、脾昇胃降(2)を失調し、脾失健運(3)で痰湿内生(4)、胃気上逆となり、つわりが出てくるとしています。

また、妊娠によって陰血が胎児を養い、肝血不足となり、肝気旺盛(5)を招き、旺盛になった肝気は脾胃不和(6)を引き起こし、つわりに繋がります。

 このように妊娠中で、肉体的にも精神的にも一番しんどいといわれるのが妊娠初期です。
つわりもおさまり、流産のリスクもぐっと減少する妊娠4か月目に入ると、カラダも心も穏やかさを取り戻す安定期に入ります。

 

【単語解説】

  1. 衝脈の気
  2. 脾気は昇り、胃気は降りる働きがあること
  3. 脾が健やかに気血や水を運んでいかないこと
  4. 余分な水である痰湿が生じること
  5. 肝の気がパンパンに上がること
  6. 脾と胃が調和しないこと

 

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女性のカラダ③―妊娠

女性のカラダ③は、妊娠。女性器断面

 妊娠とは、胚胎形成から分娩までのことで、有軀・重身・有子・懐子(かいし)・懐孕(かいよう)と言います。
妊娠について『霊枢』の「決気篇」には、“両神相搏、合而成形、常先身生、是謂精”とあり、『女科正宗』には“男精壮而女経調、有子之道也”とあります。

 妊娠日期の計算は、末次月経の第1日から計算し、お産まで280日で妊娠期間となります。 最終月経が来た日を1か月目と数えて、その後の排卵で妊娠して2週間経ったら、すでに妊娠2か月目。 生理が来ないことで妊娠に気づき、産婦人科で初診を受ける頃には、たいてい妊娠2か月になっています。

 しかし、産婦人科の超音波検査で赤ちゃんが育っているかを確認出来るのは、排卵してから約3週目以降なので、「赤ちゃんができたかも!」とあわてて診察を受けに行っても、妊娠が確認できないことがあります。

 胎児の発育について、『千金要方』には、”妊娠一月始胚、二月始膏、三月始胞、四月形体成、五月能動、六月筋骨立、七月毛髪生、八月臓腑具、九月穀気入胃、十月諸神備、日満即産也”と書かれています。

  • 妊娠4か月 : 胎児の性別が明確に。 妊婦はこの頃から胎動を感じます。
  • 妊娠5か月 : 胎児の心臓もよく発育してくるため、心音を聞くことができます。
  • 妊娠7か月 : 男児の睾丸は陰嚢へと下行し始め、女児の大陰唇もでき始めます。 もしこの頃に早産となっても、胎児は産声をあげられ、また嚥下もできますが、生存能力は非常に低く、特別な保護が必要です。
  • 妊娠8か月 : もし産まれても、保護が充分であれば生存が可能。
  • 妊娠9か月 : 生存率も高くなります。
  • 妊娠10か月 : 胎児の身長は5cm、体重は3kg前後になります。

 出産予定日は、最終月経開始日の月 +9日 or -3日 +7日で計算すると出ます
(例えば、最終月経開始日が1月13日だった場合 ⇒ 出産予定日は10月20日)

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女性のカラダ②―月経

女性のカラダ②は月経。
女性の主な生理特徴は月経・妊娠・出産・授乳です。

女性器断面

 月経とは、月1回、周期性の子宮出血のこと。
『本草綱目』という古典に、“女子、陰類也、以血為主、其血上応太陰、下応海潮、月有盈虧、潮有朝夕、月事一月一行、与之相符、故謂之月信、月水、月経”とあります。

  1. 生理現象 :
    初潮 : 初めての月経。 平均12歳が初潮で約35年間続く。
    絶経 : 月経停止。 49歳頃閉経となる。
    月経周期 : 月経出血の第1日目は月経周期の1日目。 2回月経出血の第1日目の間隔は月経周期という。 普通は28日間。 21日~35日間以内
    月経期間 : 3~7日間
    総出血量 : 50~80ml
    出血の状態 : 濃い赤~薄い赤、固まりはない、異臭はない
    合併症状 : 軽度の情緒不安、乳房脹痛、小腹部疼痛、腰のだるさ
    特別月経 :①并月 : 2ヶ月に1回
            ②居経或いは季経 : 3ヶ月に1回
            ③避年 : 1年に1回
            ④暗経 : 一生無月経であるが、妊娠が出来る
            ⑤激経 : 妊娠しても月経が月ごとに来る
  2. 月経のメカニズム :
     『黄帝内経』の「上古天真論」には、“女子七歳、腎気盛、歯更髪長、二七而天癸至、任脈通、太沖脈盛、月事以時下、故有子……七七任脈虚、太沖脈衰少、天癸絶、地道不通、故形壊而無子也”とあります。
    これは、月経の来潮は腎気、天癸、臓腑、気血、経絡などの協調が重要であることを述べているものです。

    ①天癸と月経 :
     天癸(性腺発育を促す物質、生長ホルモンや性ホルモンに類似)は成長・発育・生殖に影響する腎精。 その源は両親の気を受け継ぎ、腎気により作られ、水穀精微(食物の営養物質のこと)の滋養により成熟し分泌される。 腎気の衰弱により天癸は絶えてしまう。 男女ともに天癸を持っている。

    ②臓腑と月経 :
     主に、腎肝脾が重要。

    腎 : 腎者、主水、受五臓六腑之精而藏之。 腎は先天の本で、精を貯蔵し腎陰と腎陽を生じる。 精から血に変化し、月経の基本物質となる。 腎陰により、成長・発育・生殖を司り、腎陽により天癸の発生を促進し、天癸の断絶にも関わる。 腎精は骨髄を生じて脳を充実させるので、月経の調節にも関わる。

    肝 :蔵血(血を貯蔵)の働きにより、血量を調節する働きを持っている。 この働きは肝の疎泄により正常を保つ。

    脾 : 後天の本(後天的な生命の源)で水穀精微を運化し、気血を作る。 気により血が血管に流れ、血によって月経を充実する。

    胃 : 水穀の海(食物を受け入れる器官)で、気血が豊かな腑で月経の量を保ち、産後の母乳の提供にも関連する。

    心 : 血脈を司るため、心気により血が流暢に胞宮(子宮)に流れ込んで月経の正常を保つ。

    肺 : 全身の気を司り、血の流れの基本となる。

    ③気血と月経 :
     血は月経の出血の基本となり、気は月経の血を運行の力となる。

    ④経絡と月経 :
    衝脈 : 衝脈は“五臓六腑之血海”といわれる。 十二経絡の経気を調節する。
    任脈 : 陰経と膻中に集まり、精・血・津液を司るため、妊養の意味も含まれる。 任脈の流れがよければ、月経の来潮、妊娠ができる。
    督脈 : 督脈は一身の陽脈を監督し、陽脈の海といわれ、任脈と一緒に陰陽の脈を調節し、月経の正常を保つ。
    帯脈 : すべての経絡を管理し、正常運行を保つ。
    衝脈は血海で、任脈は胞胎を司り、督脈は監督し、帯脈は管理し、月経の正常を保つ。

     

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