今年も旧正月(1月25日)の時期に中国からの旅行客を迎えるため、商店街やデパート、観光地では沢山の商品を用意し準備していました。
しかし、中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(新型冠状病毒肺炎)のニュースが台風のように入ってきました。2月10日までに中国で診断された患者数は40,235例となり、全快した数は3,283例ですが、死亡数909例となっています。この新型肺炎は中国から多くの国に及び、世界公衆衛生の緊急問題となっています。
各国から、特に日本政府や民間企業、団体から多大な支援を中国に送っています。私も日本中医協会の仲間と一緒に、物資や集まったお金を中国に送り、微力しながら応援をしています。
中国では西洋医学の治療以外に国家中医薬管理局が臨床の専門家が集まり、『傷寒雑病論』の麻杏石甘湯・射干麻黄湯・小柴胡湯・五苓散のいくつかの処方を加減して作った「清肺排毒湯」(麻黄9g 炙甘草6g 杏仁9g 生石膏15~30g(先煎) 桂枝9g 沢瀉9g 猪苓9g 白朮9g 茯苓15g 柴胡16g 黄芩6g 姜半夏9g 生姜9g 紫菀9g 款冬花9g 射干9g 細辛6g 山薬12g 枳実6g 陳皮6g 藿香9g)を提案し、一日1剤、水で煎じる、食後40分間温服、一日朝晩2回、3日間1クールに設定し、投薬を行いました。
山西省(感染症119名)・河北省(感染症218名)・黒竜江省(感染症331名)・陝西省(感染症213名)の発熱・咳・のどの痛み・倦怠・食欲がないなど、影像検査で診断された新型コロナウイルス感染症の患者214名に、1月27日から2月5日までの10日間で治療した結果、60%以上の感染者の症状と影像検査が著しく改善、30%の症状が安定し悪化しなかったとのことです。総有効率は90%に達成しているので、この処方を各地に推薦し、西洋医学と中医学の両方の治療を臨床に投入しています。
この新型コロナウイルスは人から人への感染をしますが、日本国内では現在、流行が認められている状況ではありません。このような時でも、通勤電車に乗る人々はほとんどマスクをしています。先日車内が乾燥していたため、のどが涸れて咳が出た時には回りの人々がすぐに避けて行き、苦笑しかできませんでした。
アメリカでは昨年の年末から現在までインフルエンザが流行り、21万人が入院し、死者数は1万2千人になっていることが産経新聞で報道されています。日本でも毎年インフルエンザのために1万人ぐらい亡くなっているそうです。
これらの疫病は国立感染症研究所がまずは、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って口や鼻をおさえる「咳エチケット」や、石けんを使った手洗いなどの感染症対策を行うことが重要だと指導しています。
中医薬膳学としては、疫病の予防として、“正気存内、邪不可干”(体内に体を守る正気があれば邪気の侵入ができない)という教訓があります、病気になるかならないか決定する要素は正気、いわゆる免疫力、身体が持っている病気に対する抵抗(防衛)力と環境の変化に適応する調節力が鍵となります。
この免疫力を高めるために気を補うことは大事です。漢方の「四君子湯」「十全大補湯」「人参養栄湯」「補中益気湯」など、日本の健康保険が使える方剤があります。また、「玉屏風散」(黄耆 白朮 防風)も使えます。
食事は薬膳の料理を薦めます。まず正気を補う食材を選び、免疫力を高めます。それから補った気をよく巡らせ、営養させるために血を補い、体を温める食薬を選びます。下表を参考にしてください。
分類 |
食材 |
中薬 |
気を補う |
糯米 粳米 南瓜 隠元 長芋 じゃが芋 キャベツ カリフラワー 椎茸 栗鶏肉 牛肉 うなぎ いわし たら すずき 石持 カツオ さば 鮭 蜂蜜 |
なつめ 人参 白朮 黄耆 党参 甘草 |
血を補う |
ほうれん草 にんじん いか 葡萄 たこ |
当帰 熟地黄 芍薬 竜眼肉 |
温める |
生姜 葱 大葉 玉葱 らっきょう 蜜柑 唐辛子 にら 胡椒 黒砂糖 |
肉桂 陳皮 青皮 枳実 枳殻 |
尚、上述の食材と中薬を使って薬膳料理を作る時には、ごはんやお粥、スープ、煮物、炒め物などできるだけ温かい料理をお勧めします。美味しくて温かい薬膳料理を食べれば、体力が高まり、穏やかに日々を過ごすことができます。
もう立春を過ぎましたので、気候は少しずつ温かくなります。新型コロナウイルス感染症もそのうちに消えていくでしょう。みんな、薬膳で元気に頑張りましょう!