女性のカラダ⑥―出産

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分娩
 成熟あるいは成熟に近い胎児とその付属物(胎盤・臍帯)が、母体の子宮内から産出される過程を、分娩といいます。

分娩の生理
 宋代の楊子建の『十産論』で、分娩に関して「正常な分娩とは、懐胎してから10か月、陰陽の気が充分に与えられ、突然と陣痛がおこり、胎児が下りて、破水し血が下る」ことを言う、「分娩時には胎児の位置が正しい位置をとるのを待つべきである。 頭が産門に至った時、力を込めていっきに送り出せば、胎児は正常に生まれる」と論じています。
 また、同じ宋代の陳自明の『校注婦人良方・産難門』でも、「分娩時に力を込めるのが早すぎてはいけない。 産室は安静な状態にすべきであって、冷えすぎていたり暑すぎたりしてはいけない」とあり、さらに難産の状態と助産の方法についても言及されています。

正常出産への影響因子
 産婦の精神状態も、分娩に影響を与えます。 早くも唐代の『備急千金要方・産難』で、「出産時、多くの人に見られることを嫌う。 ただ2~3人がそばにいるようにすべきである。 …(中略)…もし多くの人が見ていれば、難産になりやすい」「産婦は第1に、慌てたりしてはいけない。 事前に備えていなければ、憂愁をもたらすことになり、憂愁があると難産を引き起こす」と指摘しています。 産婦の精神状態が過度に緊張状態や畏怖状態にあると、子宮の収縮だけでなく、産婦の精力を消耗させ易く、順調な分娩を阻害する要因になります。

 産婦の素体(体質)も、分娩に対して影響があります。 もし痩せて虚弱体質であったり、気血不足の場合は、 早産を起こしやすく、産力も足りなくなります。 肥満産婦は滞産になりやすく、胎児の育ち過ぎや位置の異常、産後出血を引き起こすことがあります。 また脾胃虚弱な産婦は、出産する力が弱いため、出産の全過程が長引くことがあります。

 

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女性のカラダ⑤―妊娠中期~後期

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 妊娠中期から末期にかけては(3か月~)胎児が必要とする栄養が日々増加するため陰血が相対的に不足し、気血の調和を失いやすく、血虚胎熱という症状が出やすくなります。 胎児が大きくなるにつれて、頭部が下に移動し、膀胱や直腸が圧迫され、頻尿や便秘、下肢のむくみなどが現れることがあります。 また妊婦さんによっては、臍下の正中線や外陰部の色素が濃くなったり、顔面の鼻や頬の両側に黒褐色の斑ができたり、腹壁・乳房・大腿内側の皮下に裂紋のような斑紋(妊娠紋)が現れることがあります。

 安定期を過ぎると、今度は早産のリスクが生じます。 また、この時期に心配なのが妊娠中毒症。 短期間での体重増加や下肢のむくみ、高血圧などの症状があれば、早めにお医者さんに相談しましょう。

 簡単なケア方法は以下の通りです。

  • むくみ* : 足を高くする、あずき・とうもろこし・金針菜・冬瓜・鯉を食べる
  • 高血圧 : 塩分を控える、セロリ・トマト・りんご・マコモを食べる

 *むくみは中医学で「水腫」といい、津液代謝異常です。 からだの余分な水分をデトックスしてあげましょう。

 妊娠9か月を過ぎれば、少し早めに生まれても赤ちゃんは元気に育つ時期に入ります。 10か月に入り、赤ちゃんの頭が骨盤の中に入ってきて胎動が少なくなったら、あと少しで生まれるサインです

 

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女性のカラダ④―妊娠初期

妊娠の続きです。116844 受胎してから、妊婦の新陳代謝はより旺盛になり、体重は平均10~12kg増えます。 妊娠末期(最後の1か月)は、1週間に0.5kgを超えないように注意が必要です。

 妊娠初期(~3か月)は、吐き気・嘔吐・食事の好き嫌いが出てきます。 いわゆる「つわり」です。 母親の体質を受け継ぐひとがいたり、なかには、つわりの症状が全く出ないひともいます。 はっきりした原因は不明ですが、カラダのなかに新しい生命が誕生し、急激に状況が変化していくのにカラダ自身が対応しきれなくて、つわりなどの症状を引き起こすのでは、と考えられています。

 また、つわりで食事ができないと、赤ちゃんの栄養不足が心配になるかもしれませんが、妊娠初期の赤ちゃんはママが食事によって摂取する栄養からではなく、卵巣からの栄養で支えられているので、ママが十分に食べられなくても、赤ちゃんは発育します。
 そのほか、妊娠初期は子宮内での着床が不安定なので、流産の危険性が高くなります。

 中医学では、つわりのメカニズムは平素、脾胃の働きの虚弱で衝気(1)が上逆し、脾昇胃降(2)を失調し、脾失健運(3)で痰湿内生(4)、胃気上逆となり、つわりが出てくるとしています。

また、妊娠によって陰血が胎児を養い、肝血不足となり、肝気旺盛(5)を招き、旺盛になった肝気は脾胃不和(6)を引き起こし、つわりに繋がります。

 このように妊娠中で、肉体的にも精神的にも一番しんどいといわれるのが妊娠初期です。
つわりもおさまり、流産のリスクもぐっと減少する妊娠4か月目に入ると、カラダも心も穏やかさを取り戻す安定期に入ります。

 

【単語解説】

  1. 衝脈の気
  2. 脾気は昇り、胃気は降りる働きがあること
  3. 脾が健やかに気血や水を運んでいかないこと
  4. 余分な水である痰湿が生じること
  5. 肝の気がパンパンに上がること
  6. 脾と胃が調和しないこと

 

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