ブタペストへ行ってきました

2019年「世界中医薬学会聯合会第十六回世界中医薬大会」に出席するため、11月5日に東京からハンガリーのブタペストへ向かって出発しました。直行便はないため途中でドイツのフランクフルトで乗り換えたので、かえって長時間の旅の疲れが和らぎ、足の脹れが少し緩和されました。そして深夜にブタペストに入りました。

一昨年2018年のローマの大会に参加した際には財布を盗まれて不愉快な思いをしたので、今回は参加しないと考えていましたが、現地の中医師から中医学・薬膳の教育について交流したいと連絡があり、ハンガリーの中医の事情も知りたかったので行くことにしました。

今回の大会は世界三十数か国、八百余りの地域から専門家が参加しました。世界中医薬学会聯合会の桑濱生副出席兼秘書長と中東欧中医薬学会王偉迪執行会長が開幕式の司会を務めました。ハンガリー政府の要人が次々と紹介され、挨拶の言葉を述べました。世界中医薬学会聯合会の馬建中主席は「今、中医薬は183の国家と地域に伝播され、中国政府は40余りの外国政府と地域の関係部門と協力協定を結んでいます。また、WHOの発表により、現在103の会員国は鍼灸の使用を認め、その内18の国は国の医療保険が適用されています」と世界における中医学の実情を述べました。開幕式後に主会場と分科会場で専門家の論文発表、臨床経験の交流などを行いました。私も外国でどのように中医学を広めるか、薬膳からスタートした本草薬膳学院の教育情況を発表しました。参加者は興味深く耳を傾けてくださり、薬膳の教育をハンガリーでもやってほしいというお話もありました。

翌日は第四回第五次理事会、常務理事会及び第五次監事会が開かれました。20余りの国と地域の関係者が参加しました。桑濱生秘書長が司会を務め、馬建中主席は過去一年間の仕事をまとめて報告し、各部門の責任者もそれぞれの状況を説明しました。その中で標準部は本草薬膳学院が中心となって編纂、出版した『中医基本名詞術語中日英対照国際標準』辞典の完成について報告しました。更にスペインの参加者からEUに影響をもたらす中医薬に対する懐疑主義による危害運動に対して“国際中医薬伝統知識の保護”運動を報告しました。また国際基準の改訂や審定について審議し、2020年香港で開催する第十七回世界中医薬大会の準備情況を審査し、正式に決定しました。3日間、緊張感溢れる有意義な世界大会でした。

ブタペストに来るのは今回2回目です。数年前の新年にツアーで来ましたが、その時は余り印象に残りませんでした。今回は個人旅行の形で来ましたので、なんでも自分でやらないといけません。会場に通うためのバスの回数券を購入したいと思い、お金を自動販売機に入れましたが、チケットは出て来きません。機械を叩いても出て来きません。地元の人に助けてもらい「機械の故障かもしれず、あとで調べに来るけれども30日後にチケットセンターでお金を返す」と回答をもらいました。苦笑しかできませんでした。また、一枚一枚のチケットも幅が狭いものと広いもの(狭いものの1.5倍)があり、バスに乗る時は広いものは印字の機械に入れられず、全然使えませんでした。世界を巡って学会に出席しているうちにいろいろな予想外のことに遭遇するので面白いです。

令和元年中医健康まつり

2018年の11月17~18日、イタリアで開催された世界中医薬学会聯合会第十五回世界中医薬大会で決定した「ローマ宣言」により、毎年10月11日は「世界中医薬の日」と決まりました。

そこで錦秋の10月19日に「世界中医薬の日」のお祝いを主に、中医学の仲間と一緒に作った「日本中医協会」では、本草薬膳学院と北京中医薬大学日本校友会協同で「令和元年中医健康まつり」を計画しました。この活動は中国大使館領事部総領事と東京華僑総会の多大な支援を受け、銀座にある東京華僑総会の会場を無料で提供していただきました。

イベントの主な目的は『中医基本名詞術語中日英対照国際標準』辞典の出版の祝賀会で、それと共に日本の社会に中医学の良さをアピールするため、無料で中医学の公開講座と漢方相談を予定しました。

当日は医療法人社団同済会理事長兼院長の吉永恵実医師が司会をされ、日本中医協会汪先恩理事長、中国大使館領事部詹孔朝総領事、東洋学術出版社井上匠社長が挨拶されました。

2年の歳月をかけて作った『中医基本名詞術語中日英対照国際標準』辞典の契約経緯、製作過程などを私から皆さんに報告し、参加者の皆様に感謝の意を述べました。その後、4人の中医師がアレルギー性皮膚病、中医美容、不妊症の中医治療、中医と老化予防についてそれぞれ講義を行いました。弾き続き10名の中医師により、内科、婦人科、皮膚科、心理疾患などの病症の漢方相談や鍼灸、耳針、気功などの実技を行い、参加者の方々にご好評をいただきました。

事前では104名のお申込みでしたが、当日の参加者を含め約140名の方々が来てくださいました。会場は熱気に溢れ、毎年このような行事を開催してほしいというご希望をたくさんいただきました。

日本にいる私たち中医師が力を合わせて開催したまつりを通じて、日本の各領域で奮闘している中医薬人のための宣伝と影響を広げる場を設け、漢方医薬に関心を持つ人々が相談できる場所も同時に提供したことによって、中医薬の多彩な内容と有効性と便宜性を示すことが出来たと思っています。漢方相談の希望者は事前予約では54人でしたが当日は91人に増えました。今回のイベントは参加者の皆様からの高い評価をいただきました。

市民講座の講演を行いました

去る10月5日、さわやかな秋の休日、日本中医学会第9回学術総会市民公開講座の講師の依頼を受け、東京江戸川区で「次世代を元気にする家庭の薬膳 ~家族の元気は家庭から 手軽に作れる季節の薬膳料理を学びましょう!」のテーマで講演を行いました。

この十数年来、薬膳は新しい食のスタイルとして注目されてきました。健康の維持、老化予防、病気の予防と治療および回復補助など様々な方面に中医学の理論に基づく薬膳学は斬新な学問として発展してきました。中医薬膳学の考え方は薬の替わりに食材を選択して組み合わせることにより効果を得るというものです。その考えに基づけば、薬膳処方(薬膳レシピ)は数えきれないほど作り出すことが出来るでしょう。

一方で少子高齢化社会では外食が増え、家庭内で食事をすることが減りつつあります。次世代を担う子供たちの健康を考えると日常食をめぐる問題とも重なります。

また競争の激しい社会を生き残るために仕事に精力を注いでいる社会人、特に若者たちの食生活が乱れていることも目立ちます。

人生にとって健康は一番大事なことですが、その健康に食は欠かせないものです。食材の性質・味・効能を知って、子供の成長に合う食材を選び、適切な調理方法を用い、薬膳料理を作ることは親の責任です。大人の場合は自分の体質に合わせて薬膳料理を作って食べ、健康的な身体、明るい性格、豊かなこころを持つ人間になることが何よりも楽しい毎日を過ごす秘訣だと思います。

広い会場には本草薬膳学院の卒業生や在校生も来て下さり、また初めてお目にかかる一般参加者の方々が真剣に聞いてくださっている姿が印象に残りました。

(食糧新聞に掲載されました)