胃痛

胃痛(胃脘痛)は、上腹部の疼痛を主症とした病症のこと。 吐き気・胸やけ・膨満感・げっぷ・大便の不調(下痢・便秘・血便)などの症状も同時に現れることが多いです。

 

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 解剖学的にみると、腹部には胃・脾・肝・胆・大腸・小腸などの消化系統の器官があり、胃痛はこれらの臓腑の失調により引き起こされることもありますが、下腹部にも影響して腹痛・おなかの脹りを引き起こすことも。 また近くの心・胸脇肋に疾病が起きても、胃痛のような症状が起こることがあります。

 西洋医学における急・慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃痙攣・胃下垂などの疾患は中医学的にみると胃痛として弁証することが多いです。 また中医学ではほかに「吐酸」(胸やけ)「嘈雑」(胃のもたれ)「積聚」「鼓脹」という病気でも胃痛が現れることがあります。

 『黄帝内経霊枢』邪気臓腑病形篇に「胃病は腹脹と胃脘痛の症状がある」という記述があり、『外台秘要』心痛方篇にも「胃気虚のときには腹脹がある。 気が上逆すると心痛のような胃痛の症状が現れる」とあります。

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消化器官の中医学的生理機能

脾と胃の生理機能

 脾と胃はともに消化器官の主な臓器で、腹部に位置します。 食べ物は脾と胃の消化吸収機能によった水穀精微に変化 ⇒ 気血津液を生成 ⇒ 全身に栄養を提供しています。
 脾は乾燥を好み、湿気を嫌います。 一方胃は、湿気を好み、乾燥を嫌います。
 脾気は「昇清作用*」をもち、胃気は「降濁作用*」をもちます。 これらの機能によって脾・胃の働きが正常に保たれています。

*昇清作用 : 脾の働きの1つ。

  1. 水穀精微を上部にある肺・心・脳へ送る。
  2. 内臓の位置を固定し、臓気の位置が下がることを防ぐ。

*降濁作用 : 胃の働きの1つ。

  1. 飲食物を受納して腐熟したあと、水穀精微を脾・小腸へ、不要物である濁気を大腸へ送る。

 

肝と胆の生理機能

 肝は右の脇腹に位置し、胆は肝の裏にあります。 肝・胆の疏泄を主る作用によって、情緒・気機・血の流れ・水の代謝がスムーズに行われるのです。
 肝・胆の気が伸びやかに上昇することで、脾胃の消化と吸収作用を促進しています。

 

大腸と小腸の生理機能

 小腸は胃で消化された水穀をさらに消化吸収して精微に化生すると同時に、清濁(精微と不必要なもの)を分けて精微物質を脾、不要なものを大腸に送ります。
 大腸は小腸から送られてきた残渣を便として肛門へ送ると同時に、残渣の中にある水分を吸収、津液として再利用します。

 

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下痢のための薬膳

 下痢が発症したときの状況をよく把握しましょう。 寒熱の邪気や虚実など、タイプに応じて食材や中薬を選びましょう。

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下痢によく用いる食材と中薬

作用 食材 中薬
健脾益気 うるち米・もち米・山いも・じゃがいも・
にんじん・蓮根・干し椎茸・栗・はちみつ・
鶏肉・豚の胃袋(ガツ)・羊肉
吉林人参・黄耆・山薬・
扁豆・大棗・飴糖
清熱利湿 はと麦・あわ・とうもろこし・大豆・あずき・
ゴーヤ・きゅうり・冬瓜・すいか・金針菜・
豆腐・鯉
 茯苓・車前子・白茅根・
玉米鬚・冬瓜皮・荷葉
芳香化湿 大葉・香菜・みょうが 藿香・佩蘭・砂仁・
菖蒲・香薷
温胃散寒 にら・唐辛子・山椒・胡椒・黒砂糖 乾姜・大茴香・小茴香・
丁香・高良姜・肉桂
 健脾消食 大麦・大根・にんにく 山楂子・神麴・麦芽・
穀芽・莱菔子・鶏内金
疏肝理気  そば・玉ねぎ・らっきょう・なた豆・
えんどう豆・みかん・ジャスミン

薄荷・陳皮・青皮・枳穀・
仏手・玫瑰花・緑蕚梅

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下痢

 下痢とは、水分が多く含まれた便を、1日に何回も排泄する症状のことです。 1年中どの季節でも発病しますが、特に夏と秋には発病率が上がり、そのままよくならずに繰り返すと慢性になります。

 

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 下痢はそのほかにも、「泄瀉」「大便溏瀉」「大便溏薄」「大便鶩溏(あひるの糞のような下痢」「飧(そん)泄(消化不良のような下痢)」「下注」「腹瀉」「滞下」「痢疾」などの病名があります。 大便が泥のような軟便で排泄の勢いが激しくない下痢を「泄」といい、大便が水のように希薄で勢いが急迫な下痢を「瀉」といいます。

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古典にみる下痢

 『黄帝内経』では下痢を「濡泄」「洞泄」「注泄」などと呼んでいました。 挙痛論篇に「寒邪が小腸に侵入すると、小腸は水穀の気を受納できず、下痢や腹痛の症状を起こす」との記述があります。 下痢と小腸の関係について述べたものです。

 漢代の『傷寒雑病論』に「太陰病とは、腹部に膨満感があり、嘔吐・食欲不振・ひどい下痢、ときに腹痛などの症状がある」とありますが、下痢を「自利」と表現し、太陰脾経の病気と認めています。

 『諸病源侯論』では「泄瀉」と「疾痢」を区別しました。

 宋の時代以降、陳無択が『三因極一病証方論』泄瀉叙論で「喜ぶと散る、怒ると激しくなる、憂いがあれば集まる、驚くと動く、臓気が隔絶し、精神が奪われると、溏泄が起こる」と述べ、下痢を「溏泄」と表現して、その原因を七情に関連付けました。

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原因

 『黄帝内経』陰陽応象大論篇に「清陽の気が下部にあって上昇しなければ泄瀉の病を引き起こし…」、挙痛論篇に「多くの疾病が気の異常によって発生する……激しく怒れば気は逆上し、はなはだしければ血を吐いたり、下痢したりする」、風論篇に「冷たいものを飲食すると下痢する」という記述があるように、この時代における下痢の原因は虚弱・肝気鬱結・寒気と関連が深いと考えられていました。

寒湿邪気の侵入 : 脾は「喜燥悪湿」(乾燥を好み、湿気を嫌う)という特徴があります。 寒湿邪気の侵入 ⇒ 脾胃の運化の働きが失調。 水様性の下痢・便に未消化なものが混じるのが特徴です。

湿熱邪気の侵入 : 湿熱邪気の侵入によって脾の運化機能が失調 ⇒ 熱がこもる ⇒ 腹痛・下痢・便が臭い・肛門の灼熱感などが出現。 「暑泄」「大腸湿熱の泄瀉」とも言われます。

飲食の不摂生 : 暴飲暴食・冷たいものや脂っこいものの摂りすぎなどによって脾胃を傷め、消化機能が低下 ⇒ 下痢

肝気鬱結 : 肝気鬱結によって、木克脾土(肝気が脾に乗じて脾を傷める)のため運化作用が失調 ⇒ 下痢
特に情緒の変動で悪化します。

脾胃虚弱 : 脾胃が虚弱 ⇒ 水穀を消化・運化できない ⇒ 腸で栄養分と不要なものに分けられないまま流れる ⇒ 下痢
慢性の下痢はこのタイプが多いです。

腎陽不足 : 腎陽不足 ⇒ 温煦作用が低下 ⇒ 水液代謝がダウン ⇒ 大腸に直接水が流れ込み ⇒ 下痢

 

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