梅雨と湿温

 5月16日に、沖縄と鹿児島気象台は梅雨入りを発表し、日本列島は続々と梅雨に入りました。63c530274dcd6ad19afedad2eb413178_s この時期は雨がよく降り、湿度が高くなることになります。 この状態が約1か月続いた後、梅雨明けの報告が耳に入ります。

 梅雨については、中医学の理論の経典『黄帝内経 素問』にはあまり記録されていません。 「四気調神篇第二」から「陰陽応象大論第五」までの話は主に春・夏・秋・冬の四時と陰陽及び五臓との関係の話で、梅雨の言葉はありません。 ”所謂四時之勝者、春勝長夏、長夏勝冬、冬勝夏、夏勝秋、秋勝春、所謂四時之勝也”の話の中に長夏の考え方が出されていますが、最後に一年は四時だといっています。

 梅雨と関わる気候は湿度で、邪気は湿邪となります。 その特徴は”因於湿、首如裹、湿熱不攘。 大筋軟短、小筋弛長、軟短為拘、弛長為痿。 ……汗出見湿、乃生痤痱。”などがあります。 梅雨の季節で、湿度が高くなり、湿邪も流行ってくるので、頭が重たくなり、身熱不揚、筋肉無力・痙攣しやすい。 ……汗をかく時に湿邪が侵入するとニキビ、吹き出物、汗疹などの皮膚のトラブルが出やすくなる、という意味です。

 梅雨と脾との関係は”中央生湿、湿生土、土生甘、甘生脾、脾生肉……其在天為湿、在地為土、在体為肉、在臓為脾、在色為黄……、”のように中国の中央地域で湿は生じ、五行の土に関係し、五臓の脾とつながっています。

 

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湿温(しつおん)って、何ですか?

 湿温は梅雨、夏、夏秋の間に、雨による湿度が高くなり、湿邪または暑邪と湿邪が一緒に侵入することによって引き起こされる急性の外感熱病です。

主な症状 : 身熱不揚、身体が重たい感じ、四肢倦怠、胸と胃の痞え、舌苔膩、脈緩。

 このような症状は温病の気分証の段階、脾胃の病変を中心として考えます。 この病証に夏の感冒、インフルエンザ、胃腸炎、消化器官の伝染病、肺炎など西洋医学の病気が含まれています。

 

 湿温はどのような対応をしますか?

 脾には「喜燥悪湿」という特徴があります。 雨が多い季節は外湿が強くなり、脾の働きに影響を与えます。 脾の運化作用が阻滞され、食欲が落ちて、脘腹脹満・疲れ・下痢気味などの内湿の症状が現れやすくなります。

冷たい食べものや生もの・甘いものは脾を傷め湿を増すので、長夏にはできるだけ避けるほうがよいです。
湿を「芳香化湿」「利湿健脾」、温を「清熱化湿」で考えて中薬や食材を選びます。88a9ab25708a9c2dd5c2f114a4a0bd68_s

湿を取り除く(解表類・理気類・袪湿類・温裏類) : 
香菜・紫蘇・香薷・大葉・玉ねぎ・みかん・ジャスミン茶・陳皮・薤白・藿香・佩蘭・白豆蔲・砂仁・草豆蔲・菖蒲・大茴香・小茴香・・枳殻・大腹皮・茯苓・玉米鬚・山椒

清熱化湿(清熱類・袪湿類・理気類) :
大麦・とうがん・金針菜・チシャ・緑豆・薏苡仁・車前子・冬瓜皮・あずき・はと麦・蕎麦・とうがん

益気健脾(補気類・消食類) :
穀類・肉類・いも類・椎茸・グリーンピース・とうもろこし・大豆・栗・黄耆・白朮・朝鮮人参・党参・扁豆・山薬・大棗・山楂子・神麴・麦芽・穀芽

 

 梅雨に勧める薬膳茶

1.とうもろこし茶 :
皮つきのとうもろこし 1本
水 適量
塩 少々

  1. とうもろこしの外皮を剥き、鍋に入れて、適量の水(ひたひたになるくらい)も加える。
  2. 沸騰させてから中火にし、10分間茹でる。
  3. 茹で汁はとうもろこし茶として飲む。 実も食べる。

2.はと麦紫蘇茶 :
はと麦 15g
紫蘇 6g
水 300ml

  1. はと麦を一晩水に浸け、弱火でゆっくり粒が柔らかくまで煮る。
  2. 紫蘇をディ―パックに入れて、1に加えて5分間煮てから濾す。

3.荷葉紫蘇茶 :
荷葉 3g
紫蘇 3g
甘草 2g
湯 300ml

  1. 急須を温めてから材料を入れて湯を注ぎ、5~10分蒸らしてから飲む。

4.二豆粥 :
小豆 15g
緑豆 15g
粳米 60g
水 500ml
塩 少々

  1. 小豆は一晩水に浸ける。 緑豆と一緒に鍋に入れて豆が柔らかくまで煮る。
  2. 粳米を1に加えて粥を作る。 水を加減する。 塩で調味する。

 

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2016年北京薬膳研修旅行

 去る6月1日、「2016年北京薬膳研修旅行」がスタートしました。 遅い出発で16時、予定通り、参加者のうち15名が成田空港に集合しました。 夕日を見ながら飛行機が北京へ向かって飛び立ちました。IMG_0240

 今回、参加者は全員で19名。 2名の方が福岡から北京に入り、北京空港で合流することになっていたほか、別の2名は会場で待ち合わせることになっていました。

 6月2日の朝、中国薬膳研究会と本草薬膳学院が共同開催する「国際薬膳師(士)資格証書授与式」が天健賓館で行われました。 今年の試験合格者14名が楊鋭会長と沙鳳桐会長から証書を授与されました。 国際薬膳師(士)合格者代表の松本久仁子様が感謝の言葉をお送りしました。 中国の事情が分かるように、中国薬膳研究会楊鋭会長が中国薬膳研究会の働きを紹介されました。

 お昼は焦副会長が薬膳制作の講義と今日の薬膳メニューについて説明し、本番な中国薬膳を楽しみました。IMG_6812

 翌日の6月3日は北京中医薬大学で林殷教授の「薬膳の現状と未来」についての講義を聞きました。 今回は広く中医薬膳学を学習するために、北京中医薬大学博物館、同仁堂博物館も回り、中医学・中薬学の歴史を復習しました。 また、食事に使える中薬植物園を見学しました。

  北京は歴史的な有名な古都で、世界文化遺産も多いので、故宮博物院、天安門、万里の長城を見学しました。北京の文化に触れるために老北京胡同と新の時代の官僚の屋敷である恭王府も回りました。

 旅で最も楽しいのは食事です。 今回の食事は四川料理・広東料理・山西料理・北京ダック・薬膳料理をたくさん食べました。 特に北京中医薬大学の食堂では、学生気分で食事をしました。IMG_7236

 

 5日間の旅はあっという間に終わりました。 参加者の皆さまの多くは初めての中国、北京ですが、国際薬膳師(士)資格を発行する中国薬膳研究会の会長から証書をいただくことを喜んでおられました。 また、大学で講義を受け、博物館を見学、たくさん学習できたことに満足しておられました。 数多くの食事、よく歩く観光、感動的な北京の研修旅行でしたと感想を述べていらっしゃいました。

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大学の思い出

淑徳大学 今日(5月23日)は淑徳大学の総合福祉学部のアジアの文化と暮らしAの講座にて「中医薬膳学」の講義を行いました。 朝の陽ざしを浴びて、蘇我にあるキャンパスへ向かいました。

 大学はいつも私の憧れるところです。 明け方のキャンパスは学生がまだ少ないので静かでした。 大学のあちこちを散歩し、深呼吸をして青春の空気を吸い込み、元気が身体中に巡ってきたような感じがしました。

 日本の大学には自慢できる巨樹がよく保護されています。 この大学も同じように参天の大樹がありますが、名前が分からなくて残念でした。

 今日、参加した学生は約70名ほどでした。 このような専門性が強い、学術的な講義は、みんな退屈になるかしら?とちょっと心配しましたが、みんな、きちんと耳を傾けて真面目に勉強していました。

 午後、足を延ばして近くにある千葉大学を見学しました。 緑に囲まれている広い校園に急いで教室に向かう学生達を見て、自分の足も速くなりました。 時々中国語が耳に入りました。 留学生が少なくなった昨今、日本に来る中国人のイメージは、ほとんど繁華街で荷物をたくさん持っている観光客です。 歩きながら会話をしている二人の留学生をみて嬉しくなりました。

 薬膳の書籍を入れているかどうか確認するために図書館に入りました。 天井が高い、明るい館内は開放感があり、勉強する学生たちで溢れています。 私自身、博士論文を書くためによく国家図書館へ行きました。 資料や書籍を調べるために、朝から閉館までよく一日館内にいました。

 北京中医薬大学「学海無辺」と昔から言われました。 大学はその学習にとって最もよい場所です、それに私の大好きな場所です。

 

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