金沢への旅

 十数年前に金沢へ行ったことはありました。 仕事が終わってから夜、車で家族と金沢旅行に出かけました。 遠い道のりで、長いトンネルが次から次へ、金沢についた時にはもう朝になっていました。 それで、「金沢行きは大変だ」という記憶が残りました。

 6年前に金沢の彼女が通信生として入学しました。 地元でご主人と一緒にうどん・そばのお店を経営していて、将来的には自分のお店に薬膳のメニューも出したいという気持ちで薬膳を学ぼうと決めたそうです。★IMG_4056

 彼女のことを覚えたきっかけは、2011年の東日本大震災でした。 大地震による放射能の漏れと汚染の問題で、学校の実習に使う水は困窮していました。 その時に彼女が金沢から水が入った灯油缶をたくさん送って来てくれたのです。 すごく助かりました。 その恩返しのために、いつか金沢を尋ね、直接お礼を伝えたいとずっと考えていました。

 昨年、北陸新幹線が開通しました。 東京駅から2時間半ぐらいであっという間に金沢駅に着きました。 これから金沢で薬膳教室ができるかどうか、その風土を調べるために行こうという気持ち半分、彼女に会いたい気持ち半分で、出発しました。

 歴史・伝統・文化が溢れる都会である金沢の街をゆっくり歩きました。 いろいろな博物館・美術館を回りました。 九谷焼は好きな瀬戸物ですので、加賀温泉へ足を延ばし、美術館を見学しました。 次の本作り撮影に使える食器がほしいので、いろいろ見ました。 哲学者の鈴木大拙館を拝見しました。 中医学は哲学の医学ですので、円に対する考え方は面白いです。 中医学では陰陽学説によって宇宙を丸く書いて、太極図を明示しています。 対立にしている陰と陽は変動しながらバランスを取り、小さくなるか無限に拡大か、どのように変動しても円形を保っています。 陰と陽の学習も無限でこれからも追求しようと思っています。

★IMG_4069 金沢公園の黒門から出てまっすぐ歩くと、彼女のお店につきます。 仕事の邪魔にならないよう、事前に連絡はしませんでした。 ちょうどお昼の時間だったので、店の中に観光客の子供連れの外国人お客さんもいらっしゃいました。 綺麗な店の中に、彼女とご主人様が二人三脚で料理を作り、お客様に出しています。 予約で薬膳のメニューも出しています。 ざるそばを注文しました。 満足してお店を後にしました。 卒業生が地方で頑張っている姿をみて、嬉しかったです。

 金沢を好きになりました。 これから少し時間を作って、卒業生たちの頑張る姿を拝見していこうと思っています。★金沢3

 

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温病と傷寒

 前回、温病について簡単に説明しました。 温病とよく関わる中医学において、傷寒という考え方もあります。

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傷寒って、何ですか?

 『黄帝内経 素問』には“今夫熱病者、皆傷寒之類也”とあり、傷寒は温病と同じ熱病と関わっている中医学で、すべての外感疾病の総称となっています。

張仲景

 東漢時代(紀元25年~220年)の末に、医学家である張仲景によって『傷寒雑病論』が著されました。 張仲景は六経弁証を核心に据え、多種の外感病気及び雑病の理論、治療法則・治療方法、処方、用薬からなる体系を創りあげました。 中医学の理論と実践をみごとに統一し、その模範を示したのが『傷寒雑病論』でした。

 この書籍は、後世の中医方剤学、臨床弁証学、および臨床治療学の発展に大きな貢献を果しました。 東漢時代の張仲景を研究し、彼の著書『傷寒論』『金匱要略』の原文・版本を研究する学派です。 その医学者は歴史の中に五百家以上にも上っています。

 晋の時代の王叔和、唐の時代の孫思邈、北宋の時、校正医書局の林億が『傷寒論』を校正し、定版したため、さらに広く、深く『傷寒論』の研究をはじめました。

孫思邈
王叔和

 林億がはじめて『傷寒論』に113法、397方則がある説を提唱しました。 朱肱が『類証活人書』において、『傷寒論』に論じた六経は足の三陽経・足の三陰経であるという見方を示しました。

朱肱

 成無己が著書の『注解傷寒論』に、はじめて『黄帝内経』から『傷寒論』の弁証論治の理論を研究する方法を呈しました。

成無己

 明時代の末に傷寒学派内も多くの流派に分かれました。 硬く真似するより、その方法を活用的に応用する、晋の時代の王叔和の編集にも間違っている所もあり、新たに重訂する必要があるという主張も出ました。

 日本で飲まれている漢方薬のほとんどは、2000年以上前の『傷寒雑病論』の処方です。 その中身は、寒邪・風邪によるかぜの時に身体を温める処方を中心に紹介しています。

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寒邪・風邪によるかぜの傷寒の治療特徴

【中薬】
辛温解表 : 桂枝、紫蘇、生姜、葱白、芫荽、荊芥、防風

【方剤】
桂枝湯 : 桂枝、甘草、白芍薬、生姜、大棗

麻黄湯 : 麻黄、桂枝、杏仁、甘草

葛根湯 : 麻黄、桂枝、葛根、甘草、芍薬、生姜、大棗

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おすすめ薬膳茶

  1. 紫蘇甘草茶
    紫蘇 3g
    甘草 2g
    湯 300ml

    急須を温めてから材料を入れて湯を注ぎ、5~10分蒸らしてから飲みます。

    発熱・悪寒・頭痛・無汗・口不渇・のどの痛みにおすすめ。

  2. 生姜黒砂糖茶
    千切り生姜 3g
    黒砂糖 好み
    湯 300ml

    急須を温めてから材料を入れて湯を注ぎ、3~5分蒸らしてから飲みます。

    発熱・悪寒・頭痛・胃痛・無汗・食欲がない症状におすすめ。

 

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研究室の忘年会

 大学の忘年会はいつも世間一般より遅れて行われます。 3月12日、東京ドームホテルの42階会議室で「順天堂大学医学部公衆衛生学教室同窓会と忘年会」が開催されました。11

 3年前に私の博士指導教官がほかの大学に転職し、1年間教授不在の研究室で寂しかったので研究生を終了させましたが、その後も興味のあるテーマがあるときは研究室のセミナーに参加しました。

 昨年の忘年会では、他所の大学から就任していらっしゃった新教授が、その場で挨拶してくださいました。 睡眠を専門研究している先生です。 すぐ『黄帝内経 素問』に、睡眠と夢についての論述があったのを思い出して、先生と話す話題があると思ったのですが、食べる暇なく皆さんと話しているご様子をみて、こちらがやめました。 教授と話す機会はあまりないので、できる限り毎年この会に参加するよう、努めています。同窓会受付

 10年間同窓会の会長を勤めていらした先生は今年81歳になり、辞任願いを提出しそうだったのですが、教授のさらなる希望で会長職継続を承諾しました。

 会長から、順天堂大学の新学部「国際教養学部」が昨年度スタートし、国連からの教員も受け入れたことが紹介されました。 私もこの新しい学部の兼任教員に就任しています。 嬉しいことです。

 また、教室は昨年から研究生が増えてきました。 忘年会の時に新入生の皆さんから挨拶してもらいましたが、みんな若くて生き生きしています。

 公衆衛生教室の基本的なお仕事は、世の中のみんなを健康にすることですから、これから中医薬膳学を講義して少しずつ浸透させて行こうというのが、私の考えです。ぶた

 

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