楽し鶏が生む可愛いたまご

 結婚前、彼女はコンビニエンスストアの従業員でした。 2年前に農家に嫁ぎました。 嫁ぎ先は羊を飼っている家庭で、彼女が羊のお世話係になり、追いかける夢が始まりました。

 写真に写している白いたまごは普通の鶏が生まれたもの、薄い茶色のは会津鶏、濃い茶色のは烏骨鶏、緑色のは外国品種の鶏の卵です。 昨年、彼女は鶏を飼い始め、その鶏が今年、卵を産むことができました。 周知のように、鶏インフルエンザが流行ってくると、鶏を処分せねばならず、養鶏農家は本当に大変なお仕事です。 それでも鶏を飼養のは、なんのためですか? 私が心配して聞いたところ、「今、店で売っているたまごは、大地を踏んだことがない鶏が生んだたまごです。 その鶏ちゃんは鶏舎の棚で生活し、病気にならない、たくさんたまごを生むために、薬も使われています。 鶏にも命があり、生活もあるはずですが、このような生活をしている鶏には楽しみがないでしょう、それで生まれるたまごも美味しくないと考えました。 未来の子供たちに美味しいたまごを提供するために鶏を飼うことを決めました」。 彼女は4種類の鶏を飼い、畑に放養して、自由自在に遊ばせています。 毎日、彼女が自分で餌を作り、食べさせます。

 面白いのは、同じ餌を食べている鶏ちゃんが生んだたまごでも、殻の色はそれぞれ違います! なんで? 本人も分からないのだと答えました。 これから餌の改良、栄養成分の調査、子供たちに天然のたまごを送るなどが、彼女のお仕事だそうです。

 彼女の素直な話しを聞き、純朴な笑顔を見て、若い農家の奥様で、鶏と羊に囲こまれて、他人の健康と幸せによい食材を提供する目標を追いかける姿勢に、私の心から感服の気持ちがあがりました。 

李時珍④―『本草綱目』の貢献

 『本草綱目』の出版は、医薬学・植物学に巨大な貢献を果たしました。 はじめて本草学を水、火、土、金石、草、谷、菜、果、木、器、服、虫、鱗、介、鳥獣、獣、人に従って16部に分け、60種類を含みます。

本草名を説明し、【集解】によって産地・形態・栽培・採集を描述しました。 【修治】によって加工・炮製を教え、【気味】によって薬物の四気五味を紹介しています。 【主治】によって症状・病気などの応用を記してあります。 特に【発明】の項目に李時珍の薬物に対する観察、研究と実際の応用の新しい発見、新しい経験を記録し、方剤を付け加えて説明しています。 そこで多くの本草を補充して、訂正しました。 本の中で実用的に校正・釈名・集解・正誤・修治・気味・主治・発明・付録・付方・食用と治療を記述しています。 ほかに薬物の歴史、形態から効能、処方などを詳しく叙述しました。 これでいっそう本草学の知識を豊かにし、『本草綱目』は百科辞典となりました。

 『本草綱目』が刊行してからの後世への影響、特に外国への影響は大きなものでした。

 明の時代、外国との貿易によって、『本草綱目』は18世紀にフランス・イギリス・ロシア・ドイツなどの国々に伝わり、ヨーロッパの学者に大きな関心を引き、貴重な薬物・植物の文献として高い評価を獲得しました。 進化論を提唱したイギリスの自然科学者チャールズ・ロバート・ダーウィンは、鶏の変種・金魚の進化を研究・論証した時にも、『本草綱目』を参考し引用したという説もあります。 その論文は、イギリス王立博物館・ケンブリッジ大学・オックスフォード大学・ドイツ王立博物館・アメリカ国会図書館に保存されています。

 西の国より早く、17世紀の江戸時代前期、1607年 長崎に行った林羅山(はやしらざん)は、李時珍の『本草綱目』を入手し、徳川家康に献呈しました。 『本草綱目』の出現は、日本の本草学に大きな影響を与えました。 入手が間に合わないため、手書き本・和刻本も出版され、その後日本語版に訳されました。 『本草綱目』の内容を活用し、多くの本草書が出版されました。

 こうして李時珍は、中国を代表する世界的に有名な学者と評価されるようになりました。 古代の偉大な学者として記念するため、李時珍の墓地は、1954年 中国重点文物保護対象となり、1980年 50,000平方メートルの「李時珍記念館」が建てられました。 中薬の標本を展示している博物館、文献・書籍・古典の善本を展示している記念館、多くのメーカーの贈り物を展示している長廊、百草園と李時珍とその両親が眠っている墓の霊園の五大部分によって構成されています。 元中国科学院院長郭沫若(かくまつじゃ)、元中国最高権力者鄧小平の直筆題詞もありました。 李時珍と『本草綱目』は現在も世の中に大きな影響を与えています。

 2010年3月9日、国連教育科学文化機関世界記憶工程のアジア・太平洋地域委員会がマカオで『本草綱目』を『世界記憶名録』に登録したことを公表しました。

柳の新芽、桃の花が目に入る春、北京を訪ねました。

 古くから中医学では「寒証」・「熱証」をよく弁証します。 治療では「寒者熱之」、「熱者寒之」を強調します。 このようなマクロ的見方からの認識が長い間伝わってきました。 「寒証」と「熱証」はミクロ世界の体温とどのようなつながりがあるか? 考えたことがありませんでした。

 昨年、早稲田大学人間科学学術院体温・体液研究室の「東洋医学における温度の概念の解明」の研究課題に共同研究として参加してから好奇心を引き起され、中医学の世界では体温に対してどのように考えているのかと思考を巡らせ始めました。 中薬や薬膳は体温への影響はどのようになっているのだろうか? 興味深い研究だと思いました。

 3月15日から3日間、早稲田大学の永島教授の研究チームと一緒に北京にある中国中医科学院基礎理論研究所・中国薬膳研究会・北京医院を訪問しました。

 中医学の世界は西洋医学と全く別世界です。座談会に参加した科学院の研究員・北京中医薬大学の教授・専門家は『傷寒論』『金匱要略』などの古典から、寒い環境と暑い環境において吉林人参が免疫能力を高める結果の差異から、「寒証」と「熱証」を説明しました。 永島教授は研究による中枢体温・体表体温の差異を論じて、食べ物の体温に対する影響について紹介しました。 短い時間ですが日中両国の専門家がよく意見を交わし、学術交流を行いました。

 北京病院は中国の衛生部が直接管理する、政府高官の医療保健病院で、老年医学・糖尿病が重点ですが、社会にも開放している医療、教育、研究を行う現代的な総合性病院です。 全国でも有名な中医科を尋ね、日本語ができる中医師がいらっしゃったので、永島教授の脈を診断してもらいました。

 今回の訪問は薬膳料理を食べることも計画の1つですので、中国薬膳研究会の楊鋭会長・荊志偉副会長・山東中医薬大学の教授と先生方に本場の薬膳料理に招待していただきました。 美味しくて、美しかったです。 今回の訪問では中国薬膳研究会の先生方に細々としたお手配・ご招待などいただき、本当にありがとうございました。

 3月の北京は柳の新芽が膨らんで春風に吹かれて揺れています。 また何年ぶりかに桃の花が目に入りました。 春はいつも人に希望を与えてくれて嬉しいです。

 今回の訪問は今後の教授の研究に役立つと感じました。