「なごみ」

 茶道の専門誌「なごみ」に、薬膳の連載が始まりました。

 神農氏が食の問題を解決するため、たくさんの植物を試食していたとき、中毒になり、茶葉に積もった露水によって命が助かりました。 その時から茶葉は中薬としてもよく利用され、中医薬の分野に重要な役割を果たしています。

 したがって、茶道の専門誌「なごみ」を編集、発行する淡交社から新年度に新しい「家庭の薬膳はじめて学」のページに執筆依頼が届いた時、快諾しました。 健康に最も良い飲み物である茶の世界で薬膳を取り入れ、同じく健康志向の目標であることは素晴らしいことです。 学校の講師の先生方と相談して、分担して執筆することになりました。

 ますます、中医薬膳学を世の中に広げていきましょう。

「二十四節気」がUNESCOの世界無形文化遺産に登録されました

 去る11月30日に、中国古代で生まれ、今も使われている暦と関わり、一年の季節・気候を分けて表示する「二十四節気」がUNESCOの世界無形文化遺産に登録されました。

 農家が作物の種をまき、芽が出て、成長して熟し、実になり、収穫となることはみんな節気と関わっています。 また、社会の風俗、生活の習慣、伝統の行事なども節気とつながっています。

 今回の申請活動は2006年から始まりましたが、さまざまな原因で長らく登録できませんでした。 文化の差異によって「二十四節気」「七十二候」を英語できちんと説明し表示し、審査員の方々に理解を求めることは想像以上に難しいのです。 10年間の努力によって、今年、「二十四節気」は中国人が季節や気候、動植物などの変化の法則を把握するために、太陽の一年間の動きを観察して成立させた知識体系であると言えるよう、申請が成功しました。 世界の気象関係者からは「二十四節気」を中国第5の発明と呼ぶ声もあるようです。

 中医薬、薬膳学の分野で、二十四節気はよく利用されています。 特に季節の薬膳において、二十四節気を基にして、季節を分け、薬膳の処方を考えて作ることになっています。  

 2008年に書いた『実用中医薬膳学』の「五季に合わせた薬膳」の章に、二十四節気の取り方、節気に合わせた食材と中薬、季節の薬膳を解説しています。 考えてみると、二十四節気先取りで薬膳処方を出すことはよかったのだと嬉しく思いました。

数千年の飲食経験は薬膳の基

 先日、日本国際薬膳師会の12周年記念特別講演会に、早稲田大学教授・農学博士の矢沢一良先生をお招きし、「食物の機能性と可能性」についての講演を行いました。

 薬膳学は中医学の理論を基にした医学と栄養学、食生活をつなげる複合領域の学問です。 現代科学が及ばない部分もある学問だと私はいつも思っています。 そのため“理論根拠”を求められた時、常に“難しい”と困っています。

 矢沢先生は大量の資料から、飲食と人類の進化、健康との関係を解説しました。 特に数千年の飲食経験によって伝承してきた中医学、薬膳学はこれから健康と欠かせない学問になり、明るい未来があることを強調しました。

 確かに、飲食観は「生存するために食す」から「健康のために取る」ことに変わりつつ、食生活は病気になるかならないかの重要なキーポイントとなっています。 中医学から生まれた薬膳学は健康的に、合理的な飲食観として普及され発展してきました。 これからの食のあり方として、引き続き研究しながら教え、頑張ってまいりたいと思っています。