梅が咲く季節

 毎年2月は各教室の卒業テストのため、東京・福岡・大阪の教室を回り、最も忙しい月になります。 この時期に入ると、学生から多く寄せられるのは、「卒業してから何ができますか」という、不安を持ちながらも希望が溢れる質問です。

 そうですね、卒業してから何ができますか? 本校の学生には、もともと医療・栄養・調理に関わる学生が多いです。 中医薬膳学を学び、自分の仕事のプラスにすることが多いです。 薬剤師は薬を調剤すると同時に、服薬の注意事項に、薬膳の提案ができます。 鍼灸師は施術と同時に薬膳の話もできます。 栄養指導に薬膳の知識を提供すると、もっと信頼をもらえます。 調理師ならもっとよいメニューの考案と制作もでき、お客さんがついて行きます。 しかし、今の学生にはOLの方が多いので、これからの人生の目標を立て、楽しくいきたい方は薬膳を勉強して何をしたらいいかを深く考えますね。

 初心に戻りましょう。 本校を選んで、薬膳の道に入ろうと思ったきっかけは何でしたか? まず、自分の健康、自分の持病を自己管理できるためだと思います。 それから、この知識に関わる仕事をこなしたいということでしょう。 この数年間、世の中に薬膳という言葉が広がり、徐々にブームになりましたので、できる仕事が増えてきました。 そのために薬膳の教室や書籍・お店・商品が多く出ています。 このような現状ですから、卒業生はやりたい仕事が増えると思います。 自分が最初にやりたかったことを思い出して、勉強した薬膳知識はそれに足りるかどうかを計って、足りるならスタートをしましょう。 やっているうちに感じた不足な点を補って頑張れば、成功につながると思います。

 つい最近、卒業生からのご報告をいただきました。国際薬膳師試験に合格してから彼女は、乳がんから肝臓がんになった知り合いの方の相談役になりました。 その方は手術ができない状態で、お医者さんから2種類の抗がん剤をもらって治療をしています。 卒業生は、元々気功、経絡マッサージの専門家ですので、その技術を活かしたうえに抗がん作用のある食薬を勧め、薬膳メニューも提供しました。 現在、その患者は肝臓がんが消えて、乳がんも小さくなりました。 人に役立つことは何より楽しいことです。 この話を聞いて、私は卒業生がこのように活躍していることを嬉しく思いました。

 2月は梅の花が咲く季節です。 昔の詩人・王安石に「墻辺数枝梅、凌寒独自開、遥知不是雪、為有暗香来」という梅を絶賛する詩があります。 自然界の寒い季節で、梅の花が静かに一りん一りん咲き、人に喜びを送ります。 卒業生の皆様におかれましても、薬膳の道を一歩一歩しっかり歩んでいくことを願っています。 卒業生の皆さま、頑張ってください。

北京中医薬大学日本同窓交流会参加感想

 大学を卒業して41年、日本にはどのぐらい母校の卒業生がいるかしら? 未知数です! WeChatの「北中医日本群」に55名が登録されています。 しかし入っていない方も結構おります。 在日の同級生の何人かも入っていないです。

 年末に突然お知らせが入り、1月8日12時から14時の日本同窓会交流会参加の誘いでした。 発起人はほとんど日本人の留学生です。 ちょうど交流会の日の午前中は授業があり、参加しても遅刻になり失礼なことになるので、不参加と考えました。

 ところが、日本で皆様がどのように活躍しているかしらと好奇心が湧き、知人にも勧められて参加の申し込みをしました。

 思った通り1時間ぐらい遅刻で会場につきました。 参加者27名の中では、日本人の方が多かったです。 多くの留学生は日本に帰り、鍼灸学校に入り、鍼灸師になり、臨床で従事しています。 中国で中医師の医師試験に合格しても日本に帰って中医師の仕事ができないことが、私と同じく、みんな共通の悩みです。

 参加の皆さまが一人ひとり自己紹介をして、私が一番年長者であることがわかりました。 悲しいですね! 発起人のメンバーは毎年会っているようですが、初めてこんなに人が集まったらしく、交流会、二次会、三次会とにぎやかに2017年がスタートしました。

 この数十年間、海外へ渡り、中医薬を広げる中医師の人々は、所在国の事情によって状況と待遇が大きく違います。 中医薬・伝統医学・東洋医学がない国でも、中国の学歴、職歴を認められ、医師の仕事ができますし、その国における中医立法にも携われています。 日本では隋唐時代から中国との交流があり、中医学が日本に入り、江戸時代に大きく発展しました。 しかし、50年代以降、東洋医学学会も設立され、中薬も素晴らしく製薬され、伝統医学が定着しているため、中医薬は難しい立場になっています。

 中医薬の入門として薬膳を選んで普及教育を行ってきた14年の経験から見ると、私はよい選択をしたと思います。 だって、中医薬の源は食材と食事ですから。 これからも仲間や卒業生と力を合わせて、微力ですが続いて努力すれば、きっと中医薬の新しい局面を迎えることができます。 

 北京中医薬大学日本同窓交流会に参加してよかったです。 発起人の先生方、お疲れさまでした。 ありがとうございました。

「第20回日本統合医療学会」で「中国伝統医学の薬膳」を発表しました

 昨年のクリスマスに、仙台にある東北大学医学部キャンパスにて「第20回日本統合医療学会」が開催されました。 高齢化、医療費用の高騰が進んでいる今の社会の現状から、今回の大会では「食と健康」を1つのテーマとして、シンポジウムも開催することになりました。 和食、薬膳、アーユルヴェーダの食事療法、マクロビオティック、スポーツ栄養学などの内容が大会で設定され、その分野の専門家を選択し、大会で発表し、その情報を参加者に伝えることになりました。

 学校法人服部学園の服部幸應理事長が食と健康について、「食育における減塩の重要性」という特別講演を行いました。

 薬膳の分野で私が選ばれたことを光栄に思い、大会で「中国伝統医学の薬膳」を発表しました。 どのような話をしたらいいかと考え、伝統医療の専門家に対して、薬膳の概念と歴史、薬膳の古典的な処方と現代の処方、および中国の薬膳の権威組織「中国薬膳研究会」を紹介しました。 この会が政府の委託によって国の「薬膳師」資格を作り、17種類の薬膳メニューを認定したことなどの内容を報告しました。 参加者の皆様が興味津々で聞いてくださいました。 大会に参加して専門家と交流ができて、自分の勉強にもなりました。

 2016年のお仕事は、とても綺麗に飾られた仙台のクリスマスの夜景のなかで幕を下ろしました。