秋と秋燥

6d2e8729ff7426c41ea800798bee86ac_s 秋は、立秋から立冬までの3か月をいいます。 暑い夏から徐々に涼しくなって、寒い冬に入っていくこの時期は、気候が涼しくなり、乾燥してきます。 秋の前半(秋分前)には、夏の暑熱がまだ残っているので、秋の燥が加わると「温燥」、晩秋(秋分後)になると、冬の寒気が加わって「涼燥」となります。 人体の陰陽も「陽消陰長(陽が消え、陰が生長する)」になっていき、冬を越える準備に入る時期なので、養生もこれらを考慮に入れて、飲食・精神・意識・起居・運動などの面で工夫する必要があります。

秋燥とは、温病の考えで病名です。 秋に燥邪に侵入によって起こされる発熱、微悪風寒、少汗、咳、痰少、のどの乾燥と痛み、鼻の乾燥と熱感、口微渇、舌辺・舌尖紅、舌苔薄白少津液などの急性外感熱病です。b72c7d95f866abcba7b98b27c74db778_s

 燥邪は六淫邪気の1つで乾燥性を持ち、身体の津液をよく消耗しますし、「喜潤悪燥(潤いを好み、乾燥を嫌う)」の肺を傷めやすいです。 秋に、燥邪が口鼻から体表と肺に侵入し、津液を乾燥させて、皮膚・毛髪、鼻・のどなどの穴が乾燥し、動きが悪くなります。 また、肺の宣発と粛降に影響し気機の運行も渋くなります。

 

1.秋の養生薬膳処方

  1. 「温燥」には涼性、甘味・苦味の食材と中薬を使います

    初秋は、残暑と乾燥した秋気の影響で、のどの乾燥や痛み・鼻血などのために、身体が津液不足の状態となるので、涼性、甘味・苦味の食材や中薬により「清熱生津」作用のある食薬で余熱を清め、津液を生じさせます。 また「滋陰潤肺」「益胃生津」の作用をもつもので肺を潤すようにします。

    刺激的なもの、例えばねぎ・生姜・にんにく・唐辛子などは控えます。 苦味でも微苦の食材を勧めます。

    勧める薬膳茶

    1.【食薬】
    清熱 : セロリ・セリ・胡瓜・トマト・粟・黍・小麦・大麦・湯葉・リンゴ・柿・びわ・梨・苺・茶・竹葉・荷葉 など
    滋陰生津 : 小松菜・アスパラガス・松の実・白ごま・黒ごま・牛乳・卵・貝類・川貝母・百合・沙参・麦門冬・枸杞子 など

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    2.梨胡瓜麦門冬茶
     梨 1/2個
     胡瓜 1/2本
     麦門冬 15g

     ①麦門冬は300ml水に戻し、弱火で30分間煎じる。
     ②梨と胡瓜を洗って、適度に切り、①と一緒にミキサーにかける。 濾して飲む。

  2. 「涼燥」には温性で辛味・酸味の食材や中薬を使います

    立冬に近づくと寒気が強くなり、秋は温燥から涼燥に変化します。 皮膚・毛髪の乾燥・脱落、シワ、フケなどが生じ、寒気を感じるようになります。 この時期には、温性で、辛味・酸味の「温肺滋陰」作用をもつ食材や中薬を取り入れるべきです。

    勧める薬膳茶

    1.【食薬】
    補気滋陰 : 糯米・粳米・くるみ・鶏肉・黒ごま・蜂蜜・吉林人参・小松菜・アスパラガス・松の実・杏仁・五味子・ねぎ・生姜 など

    2.松の実米茶
    粳米 30g
    松の実 10g
    くるみ 10g
    白ごま 10g
    肉桂末 1g

    ①粳米は水に1時間浸ける。 松の実・くるみ・白ごまは乾煎りにする。
    ②ミキサーに①を入れてかける。
    ③鍋に②を入れて水を加減し沸騰させてからゆっくり煮てから火を止める。 肉桂末を加える。

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2.秋燥の薬膳処方

温病から見ると、秋に燥邪による現れる症状は気分証の病証です。 多くの病証に上述した症状である「邪在肺衛」証を選択し、薬膳で対応しましょう。

勧める薬膳茶

桑杏連翹茶 :
 桑葉 3g
 杏仁 6g
 連翹 6g
 沙参 3g
 桔梗 3g
 甘草 3g

  1. 土鍋に材料を全部入れて15分間浸けてから沸騰させて弱火で15分間煎じて濾す。
  2. 土鍋に再び水を入れて1と同じように煎じる。
  3. 1.2.の薬汁を混ぜ合わせて1日3回分けて飲む。

三日勝於三年

 毎年7月、通信生のために「夏季スクーリング」を行います。 お知らせを出してから間もなく定員になりました。 今年も予定通り開催しました。劉先生アップmini

 今年はどのような学生が集まってくるかしらと想像しながら、初日の朝 1時間早く学校につきました。 愛知県からの学生が待っていました。

 3日間スクーリングが始まりました。 通学コースの1年間教室で順番に教えていくのと違い、通信生の集中講座の講義は教材内容を絞ったポイントを教えるために、講師側の授業準備が必要です。 また人数が多いので、実習時にどのように学生を動かし、スムーズに料理を作るかの工夫も必要です。 幸いなことに職員たちの準備、講師たちの努力、学生たちの協力があり、3日間のスクーリングが無事終了しました。松本先生mono

夏メニューmini 今回は北海道から九州、日本にいる学生だけではなく、フランス・カナダ・マレーシアからの学生も参加しました。 また、日本にいる中国籍の学生も一緒に参加しました。 教室では国際的な雰囲気になり、みんな楽しく学習しながら薬膳料理実習を行いました。

 最終の感想を述べる時、学生から「いつも独りぼっちの学習で、なかなか進まなくて困っていたところでスクーリングに参加し、同じ悩みを持っている方々と出会い、情報を交流し、お互いに励ましあって、これから頑張って勉強を進めていきたい」と感想を頂きました。

 「この3日間の学習は内容が充実していて、学習中のいろいろな疑問点が解決できました。 実習によって身体によい薬膳料理が身近にあるということを実感しました。 この3日間で取得した知識は自分で3年にかけて得た知識より豊かです。」という言葉は、私の心を温かくさせてくれました。 通信生の皆さま、これからも頑張ってください。

九層之台起於累土、千里之行始於足下~日本での中医薬教育の心得~③

 国際的にも本校は創設以来中国と友好関係を築いており、毎年の薬膳の旅では現地の大学と交流し、中国の中医学や食文化と触れ合っています。 これまでにシルクロードの陝西・新疆・甘粛、南方の桂林・昆明・麗江・西双版納・広州、四川省・南京・北京・河南、韓国などを訪問し、上海中医薬大学・陝西中医学院・新疆医科大学中医学院附属医院・雲南中医学院・南京中医薬大学・成都中医薬大学・北京中医薬大学・河南中医学院と交流してきました。 2005年・2009年・2010年には韓国霊山大学・北京中医薬大学・河南中医薬大学などと提携校の契約を交わしました。第5回国際養生料理コンテスト

 2006年には、東京で「薬膳と食生活国際学術シンポジウム」を開催し、日本・中国・韓国・台湾の代表250人が参加しました。

 振り返ってみると、14年間、私たちは薬膳の教育、薬膳の宣伝・普及など多くの活動を行ってきました。 いろいろな困難をのり越えて学校も発展してまいりました。

 創立以来14年間、本草薬膳学院は先生たちのご支援と、卒業生ならびに学生の皆様のご協力によって基盤を作ることができました。 ここに皆様に心から感謝します。

 老子が曰く「九層之台起於累土、千里之行始於足下(千里の行も足下より始まる)」。 昔、中国では9が最高の数字でした。 9階建ての城も、もとは少しの土を積んだところから始まる、千里の道を行くのも足もとの一歩から始まると教わっています。 唐の時代の名医孫思邈氏曰く“上医医未病、中医医欲病、下医医已病”、医者は上医・中医・下医という3つのレベルがあります。 下手な医者は病人を治療する、中レベルの医者は病気にかかる段階を治療する、上手な医者は予防のために、未病に着手するということを示しています。 中医薬膳学は上医レベルを目指すことが、私たちの使命になります。 次にくる未来に向け、より深く中医薬膳学の真髄を究め、より弁証論治・弁証施膳の中医薬膳学の応用を求め、日本一の薬膳教育学校を目指して、同じ道を辿る仲間と共に努力して参りたいと思います。