温病と傷寒

 前回、温病について簡単に説明しました。 温病とよく関わる中医学において、傷寒という考え方もあります。

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傷寒って、何ですか?

 『黄帝内経 素問』には“今夫熱病者、皆傷寒之類也”とあり、傷寒は温病と同じ熱病と関わっている中医学で、すべての外感疾病の総称となっています。

張仲景

 東漢時代(紀元25年~220年)の末に、医学家である張仲景によって『傷寒雑病論』が著されました。 張仲景は六経弁証を核心に据え、多種の外感病気及び雑病の理論、治療法則・治療方法、処方、用薬からなる体系を創りあげました。 中医学の理論と実践をみごとに統一し、その模範を示したのが『傷寒雑病論』でした。

 この書籍は、後世の中医方剤学、臨床弁証学、および臨床治療学の発展に大きな貢献を果しました。 東漢時代の張仲景を研究し、彼の著書『傷寒論』『金匱要略』の原文・版本を研究する学派です。 その医学者は歴史の中に五百家以上にも上っています。

 晋の時代の王叔和、唐の時代の孫思邈、北宋の時、校正医書局の林億が『傷寒論』を校正し、定版したため、さらに広く、深く『傷寒論』の研究をはじめました。

孫思邈
王叔和

 林億がはじめて『傷寒論』に113法、397方則がある説を提唱しました。 朱肱が『類証活人書』において、『傷寒論』に論じた六経は足の三陽経・足の三陰経であるという見方を示しました。

朱肱

 成無己が著書の『注解傷寒論』に、はじめて『黄帝内経』から『傷寒論』の弁証論治の理論を研究する方法を呈しました。

成無己

 明時代の末に傷寒学派内も多くの流派に分かれました。 硬く真似するより、その方法を活用的に応用する、晋の時代の王叔和の編集にも間違っている所もあり、新たに重訂する必要があるという主張も出ました。

 日本で飲まれている漢方薬のほとんどは、2000年以上前の『傷寒雑病論』の処方です。 その中身は、寒邪・風邪によるかぜの時に身体を温める処方を中心に紹介しています。

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寒邪・風邪によるかぜの傷寒の治療特徴

【中薬】
辛温解表 : 桂枝、紫蘇、生姜、葱白、芫荽、荊芥、防風

【方剤】
桂枝湯 : 桂枝、甘草、白芍薬、生姜、大棗

麻黄湯 : 麻黄、桂枝、杏仁、甘草

葛根湯 : 麻黄、桂枝、葛根、甘草、芍薬、生姜、大棗

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おすすめ薬膳茶

  1. 紫蘇甘草茶
    紫蘇 3g
    甘草 2g
    湯 300ml

    急須を温めてから材料を入れて湯を注ぎ、5~10分蒸らしてから飲みます。

    発熱・悪寒・頭痛・無汗・口不渇・のどの痛みにおすすめ。

  2. 生姜黒砂糖茶
    千切り生姜 3g
    黒砂糖 好み
    湯 300ml

    急須を温めてから材料を入れて湯を注ぎ、3~5分蒸らしてから飲みます。

    発熱・悪寒・頭痛・胃痛・無汗・食欲がない症状におすすめ。

 

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めまい

 めまいとは、目が回り、頭がくらくらする症状ですが、慢性疾病によって引き起こされる症状の1つでもあります。 症状により、実証・虚証・虚実兼証の3種類に分けられます。

 

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古典にみるめまい

 めまいについての最も早い記載は『黄帝内経 素問』。 「掉眩」「眩冒」と書かれています。 至真要大論篇には「諸風掉眩、皆属于肝」、『金匱要略』には「心下有支飲、……其人苦冒眩、沢瀉湯主之」と記載されています。 この「冒眩」はめまいのことです。 『丹渓心法』には「痰がなければめまいは起こらない」と書いてあり、めまいのメカニズムを肝機能の失調・痰飲と結びつけています。 そのほかに熱盛・上気不足・髄海不足なども原因になります。

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原因

肝気鬱結
ストレス ⇒ 肝気鬱結 ⇒ 肝鬱化火 ⇒ 肝陰を傷める ⇒ 肝陽が頭部に乱上 ⇒ めまいに

腎精不足
老化 あるいは 慢性疾病 ⇒ 腎精不足 ⇒ 髄海不足 ⇒ めまいに

気血両虚
慢性疾病 あるいは 大出血 ⇒ 気血両虚 ⇒ 清陽不昇・血不養神 ⇒ めまいに

痰湿内盛
肥満や水湿停留 ⇒ 痰湿が生じる ⇒ めまいに

瘀血内阻
けがや気滞 ⇒ 瘀血内阻が生じる ⇒ めまいに

 

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不妊症⑤

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ホルモン異常と中医学の対応

  1. 女性ホルモンの概念
    西洋医学 : 視床下部 ― 脳下垂体 ― 卵巣 のつながり
    中医学 : 心 ― 腎 のつながり

     

  2. ホルモン異常の病因
    ストレス
    先天不足
    加齢

     

  3. よく見られるホルモン異常
      1. 高プロラクチン血症
      2. 黄体不全
      3. 多嚢胞卵巣症候群

         

      1. 高プロラクチン血症
        原因 : 肝鬱・痰湿・腎虚
        症状 : 月経後期、無排卵、閉経、不妊、溢乳、PLR(プロラクチン)検査 > 15
        治療 : 疏肝・化痰・瘀血
        方剤 : 麦芽・加味逍遥散

         

      2. 黄体不全
        症状 : 月経不順、不正出血、高温期が短い、低い、疲れる、むくみ、流産
        原因 : 気虚・陽虚・瘀血
        治療 : 補気・補陽・活血
        方剤 : 補中益気湯・鹿角・紫河車・紅花

         

      3. 多嚢胞卵巣症候群
        症状 : 肥満、にきび、男性化、多毛、月経後期、閉経、不妊
        原因 : 腎虚・痰湿・瘀血
        治療 : 補腎・化痰・破血
        方剤 : 八味地黄丸・加味温胆湯・通楽

 

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